FIRST PLACE イベントレポートvol.16 「TOUCH & TASTE」麹の魅力、発酵のチカラ〈3〉
2026.07.28
「TOUCH & TASTE」

vol.16 麹の魅力、発酵のチカラ〈3〉

発酵食を愛するフードディレクターの寺本りえ子さんに教わる発酵ワークショップ。第三弾は、「麹」。米麹を種とする発酵調味料の味覚と生かし方を教わります。第一弾の味噌、第二弾のぬか漬け、さらに今回の麹各種を常備すれば、味わいは深まり、健康の支えにもなります。「キッチンから、未来を考える」集いの場、「FIRST PLACE」で、Mieleのオーブンを使い、発酵調味料の仕込みを進めます。

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今回のテーマ「麹」では、米麹を使って発酵させる麹調味料を学びます。塩麹や醤油麹はスーパーでもよく見かけるようになりましたが、今回はほかに、甘酒とナンプラー麹、そして玉ねぎ麹も、つくりかたと共に味見/味比べをしながら、その良さ、使い方を紐解きました。

発酵食がとりわけ腸内細菌の善玉菌を増やす餌として有効であることや、それにより腸内環境を整え、腸壁をきれいに保ち、消化吸収を助けることは、これまでの発酵ワークショップでも学んできたばかり。味噌、ぬか漬けといった、そのまま食せるものに加えて、今回の麹調味料は、調理のあらゆる場面に入り込めます。少しでも良質な調味料で、少しでもおいしく健康に。その大きな手助けとなる調味料は、混ぜて待つだけでできるのですから、取り入れない手はありません。

それぞれ少しずつ口に含み、味比べをすると、それぞれ、米麹の働きで塩味はまろやかに伝わり、甘みや旨みが加わった独特の深みが感じられます。

参加者がテーブルで会話をしている様子

「塩麹は塩の代わりに、玉ねぎ麹はコンソメや出汁の代わり、甘酒はお砂糖の代わり、という感じで代用できます。それぞれ、味がまろやかで深い。お肉やお魚を漬け込めば肉質を柔らかくするし、味が決まりやすい。また玉ねぎ麹は、時短にも。熟成された玉ねぎ麹でカレーを仕込めば、玉ねぎを延々炒めるような時間が不要です」

玉ねぎの辛味成分は、発酵・熟成の過程ですでに分解されているので、完成した玉ねぎ麹は、玉ねぎの辛味や刺激は消えて、コクと甘みが引き出された状態で仕上がっています。そこから調理が始まるので、時短になるのです。

また、甘酒は、素敵な派生レシピとしては「フルーツと甘酒でスムージー」! そして「塩麹と甘酒を同量で合わせて、お酢を好みで加え、赤玉ねぎのスライスをつけると、ピンクで美味しい甘酢漬けができます。つけ汁もピンクでそれだけ取り出してドレッシングにしてもきれいですよ」とのこと。
甘みとコク、旨みもプラスされる一品。これはすぐに試したくなるレシピです。

さて、今回、それぞれに手を動かしたのは珍しいナンプラー麹の仕込み。ナンプラー自体、そもそもタイで小魚を塩漬けを発酵、熟成させてつくられる発酵調味料。それを米麹と合わせてさらに熟成させます。
「ナンプラーは、できれば糖分やアミノ酸無添加のものを選びます。YOUKIもいいですね。ナンプラー麹は何にでも合わせやすくて、レモンとの相性もいいから、ドレッシングにもしやすくて、冬は鍋にもいい。仕込む際に、唐辛子やマスタードの粒を入れるとまた風味が増してオススメ」と寺本さん。

ナンプラーと塩こうじの写真

麹調味料は、低温調理でつくります。常温で毎日かき混ぜて1週間から10日ほどかけて仕上げる方法もありますが、今回は、Mieleのオーブンを使い、数時間で仕上げるレシピを学びました。麹は、15℃から60℃の幅広い温度帯で発酵、熟成します。
「常温で熟成させると旨みがしっかり引き出され、60℃近くなると甘みが際立つ」ということだそう。
70℃を超えてしまうと、酵素が変性するので、60℃は超えないようにキープします。

<材料>

  • 塩麹: 米麹100g、水 100g、塩 22-30g
  • 玉ねぎ麹:米麹 100g、玉ねぎ 300g、水 約大さじ2(玉ねぎの水分次第で調節)、塩 35g-
  • ナンプラー麹:米麹 100g、ナンプラー 100g、水 50g
  • 醤油麹:米麹 50g、醤油 70cc-(全てひたるくらいの量)
  • 甘酒:米麹 100g、水 100g

*麹は生麹の分量。乾燥麹の場合は、分量外の水でふやかしておく。

基本的なつくり方は共通で、麹と塩、水を混ぜ合わせて、55-60℃ぐらいの低温調理で7-8時間加熱するだけ。Mieleのオーブンでは、「上下加熱」モードでした。

途中、米麹の粒が完全に水分に浸かっているかどうかを確認して、7時間経たないうちに粒が表面から出ている場合には、水分を足すなど工夫します。

ナンプラーを、麹がすっかり隠れるまで入れる
左から塩麹、玉ねぎ麹、甘酒、醤油麹、ナンプラー麹

今回、つくりかたを聞いた5種類のうち、甘酒以外は常温で毎日世話をするやり方でもつくれますが、甘酒だけは、必ず60℃の加温で調理します。甘酒は塩を使わず、米麹と水だけでつくるので、常温のゆっくり発酵だといたんでしまう可能性があるのです。
低温調理という意味では、ほかにヨーグルトメーカーなどの発酵器や、炊飯器を使ったレシピもあります。

米麹は、生の麹を使いました。

生麹はふやかしてよくほぐす

「麹はよくほぐし、粒ひとつひとつがダマにならずに水分を吸収できるようにして、容器の中で材料を混ぜ合わせます。スーパーでは乾燥させた麹しか売っていないことも多いので、乾燥麹を使う場合は、あらかじめ分量外の水でふやかしてから使います」

玉ねぎ麹の玉ねぎは、ミキサーやフードプロセッサーで粗みじんからペースト状まで、お好みの状態にして、混ぜ合わせます。

寺本さんの塩麹のレシピは、塩分濃度11-13%ぐらいの仕上がり。東京農業大学の教授の研究結果とすり合わせて決めた、「塩分控えめのレシピ」とのこと。そもそも、塩麹は、塩の代用として使う場合、実際の塩分使用量の4分の1程度で済むそう。麹調味料を使ったレシピは、減塩にも効果があるということです。

first place の外観の様子

この日は、寺本さんがFIRST PLACEのキッチンで、麹調味料を使った実践料理をライブ披露。ゼロからつくり、5品のプロセスを見せていただきました。

夏の発酵カレープレートは爽やかな香り
  • 夏野菜と鶏もも肉の発酵スパイスカレー
  • イカのラープ、炒り米入り
  • 小松菜の醤油麹あえ
  • トウモロコシのソムタム
  • イワシと桃のヤム>

タイ帰りの寺本さんならではの、エスニック発酵料理です。家に着いてから30-40分で仕上げるイメージで、一連の流れを見せてくれました。

会の様子

まずはスルメイカ。セロリやインゲン、玉ねぎとざっと炒めて、唐辛子、潰してなめらかにしたナンプラー麹をじゃっと。
「ナンプラー麹だけで本当に味が決まります」
レモン汁を合わせて出来上がり。盛り付けた時にミントやパクチーを載せて。

左ナンプラー麹だけで味が決まる 右茹でた小松菜は醤油麹で和えるだけ

スパイスカレーには、塩麹と玉ねぎ麹、ナンプラー麹を使います。鶏もも肉は、重量の10%の塩麹で2時間以上マリネしておけば、しっとり柔らか。火が通りやすいナスとトマトを使い、下炒めいらずの玉ねぎ麹で一気に仕上げます。
スパイスの香りを際立たせたいので、ここでは香りのない菜種油や、タイではココナツオイルを使います。お肉と合わせて入れるのは、4人前300-400gのお肉に対して、大さじ3杯ほどの玉ねぎ麹。これにトマトの水分で煮込んで、ほぼ水は足さずに仕上げました。

トマトの水分だけで仕上げる無水カレー。塩麹マリネの肉で柔らかく。玉ねぎ麹は炒め不要で時短に
会の様子

トウモロコシのソムタムは、スパイスを叩いてつくるサラダ。ニンニクや唐辛子、コブミカンの葉とレモングラスを刻み入れて叩き潰し、すりつぶしたナンプラー麹と混ぜ合わせたソース。パクチーも根がおいしいので、潰して混ぜます。トウモロコシとミニトマトと和えて、ライムをぎゅっと絞って完成。コクがあってピリっと辛くて、そしてレモングラスが爽やか!ソースがトウモロコシの甘みを引き出します。

スパイスを叩き潰してナンプラー麹と合わせて爽やかなエスニックソースに!

最後に、イワシを開いて香ばしく揚げ焼きにして、桃と合わせた一品。ナンプラー麹とライムを合わせた麹ソースを桃と和えておき、イワシを載せてまた上からかけて。桃のジュワッとした甘みに、ナンプラー麹のコクとライムの爽やかさ、油の乗ったイワシの濃い旨み。驚きの味わいでした。

桃!イワシ!ナンプラー麹とライムのソース!

麹調味料は、どれも手元にあれば、さまざまな料理の味わいを深め、質を高めて、豊富な酵素が消化吸収をサポートし、腸内環境を整える効果に期待できることが、何よりの魅力。
寺本さんは「残り少なくなった麹調味料を全て合わせてしまって、ざっと炒め物に使ってもおいしい」と教えてくれました。
原材料が仲間同士だから、混ぜればなじみ、新しい味わいを生む。

麹の写真

麹調味料が、下味に、炒め料理の要に、ドレッシングやソースに変化するさまをライブで体験して、そのおいしさを確かめて。混ぜて待つだけ、という簡単さで、これだけの味わいの変化をもたらし、そこから目に見えない作用で身体を整える可能性を秘めた発酵微生物の宝庫ともなる、麹。持ち帰るナンプラー麹の瓶はきっとあっという間になくなります。次の仕込みの準備を、始めましょう。

麹とナンプラーの写真

GUEST PROFILE
寺本りえ子(てらもと・りえこ)
フードディレクター、料理研究家。音楽活動を経て食の道へ。発酵食やスパイス料理のワークショップの開催、出張料理をはじめ、飲食店のアドバイザー、商品開発や食育にも精力的に取り組む。2021年4月より、フリースクールで食育を担当。発酵食スペシャリスト、食育インストラクター 、フレッシュスムージーアドバイザー、ホリスティックビューティアドバイザー、漢方養生指導士初級、薬膳・漢方検定取得、きのこマイスター他、食への多彩な興味を掘り下げている。
著書に『JOY of AGING』(宝島社、2015年発行)がある。最新刊は2026年2月13日発売の『からだの中からきれいになる ぬか漬けとアレンジ発酵料理』(KADOKAWA)。
@rieko_teramoto

first placeの写真

写真/太田太朗
構成・文/森 祐子

FIRST PLACE について

「Immer Besser」(常により良いものを)の理念のもと、125年にわたる歴史の中で暮らしを見つめてきたMieleと、場づくりを軸に人の営みを考察し、交流ハブとしての試みを重ねるnadoyaによるプロジェクト「FIRST PLACE」。キッチンを据えた場をつくり、集い、交わり、共に未来を考える。

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