2026.08.18

緑豊かなアトリエに刺激を受ける日々。

暮らしのなかにある豊かさとはいったいなんなのでしょう。このシリーズではMieleのランドリー製品(洗濯機・衣類乾燥機・洗濯乾燥機)を使うみなさんのもとを訪れ、暮らしの楽しみやこだわりに耳を傾けます。今回はインテリアスタイリストの黒田美津子さんを訪ね、北軽井沢のアトリエにお邪魔しました。

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アトリエと黒田さんの写真

雑誌、企業広告、さまざまな空間のディスプレイなど、インテリアスタイリストのトップランナーとして活躍を続ける黒田美津子さん。一昨年、群馬県の北軽井沢に〈Laboratoryy|Fern|Barn〉を構えました。豊かな森に佇む築75年の木造平屋をリノベーションしたアトリエは、仕事場、作業場、考えを巡らす書斎、スタジオ、イベントスペース、そして仕事仲間たちと時間を過ごす大切な場などのさまざまな役割を担う場となっています。

アトリエの中の様子

「いろいろなこと……たとえば心地よさとはどういうことかを考え、試す場所として、この場所を設けました。私の仕事は、ターゲットやクライアントを見据えてインテリアのスタイリングを行うことです。もちろんそこには私のスタイルも含まれますが、仕事ですから、主に依頼主の要望に寄り添って仕上げることが多くなります。だからこそよりまっすぐに、自分の好きなもの、おすすめしたいもの、伝えたいことをまとめた企画展を開催したり、表現する場をもてないかと長らく考えていました」

アトリエの中の様子

この夏も企画展を予定する黒田さん。場を持ったことで、北軽井沢を訪ねる人は後を経ちません。これまでもこの場所でさまざまな撮影を行ってきたほか、スタイリスト仲間に声をかけて展示を行ったり、クライアントや仕事仲間が訪れてくるなど、場を通じた広がりを次々と見せています。「いまは勝手に観光大使になり、北軽井沢の魅力をみなさんにお伝えしているところ」と笑う黒田さん。雑誌編集者からインテリアスタイリストへと転身したという経歴も大きな意味をもつのかもしれません。

黒田さんの写真

「編集者だった当時、上司や先輩に編集作業を徹底的に教え込まれました。私のいた編集部では立場に関係なく、提案者が企画を進める学級新聞的な作り方を行なっていました。私が時計特集をしたいと提案すれば、すべてのページ構成を決めて、進めなくてはいけません。その経験から編集的な視点が染み込んでいるのかもしれません。いまも日々の仕事のなかで考えることも多いので、微々たるものではありますが、多くの人にいいものを伝えていきたいのです」

アトリエの中の様子

これまでのキャリアを振り返るとともに、黒田さんはやはり「生活の原点は家にある」といいます。快適な生活とはなんだろう、穏やかになれる暮らしはなんだろう、日々を元気に暮らせる場所とはどのようなものだろう。長い活動とともに抱え続けてきた問いをきっかけに、「穏やかになれる場、毎日に元気を与えてくれる場はやはり家だということをもっと伝えたい」と考えるようになったといいます。そこで自らのアトリエを通じ、家を考えるきっかけを人々とシェアしようと決めました。黒田さんは、アトリエを「さかさま」から考えたと振り返ります。一般的には、建物ありきで家具を考えるもの。けれど今回はすでに持っている家具、照明を活かしつつ、そしてイメージする空間から建物を考えることとしました。

アトリエの中の様子

「人が訪れてきても、一人でいても、快適な間取りにしたかったんです。この空間でこれをしたい、だからこのくらいの面積がいいだろうということもありました。一方で、廊下をなくすことで掃除をしやすい空間にしたいという実用面の考えも。アルヴァ・アアルトの自邸を訪れた時に、キッチン側にもダイニングルーム側にも開くキャビネットを見て、いつかは真似てみたいという思いも叶えました。ここでどのように生きるか、過ごしたいかを逆算して、家づくりを考えてもいいのではないかと長く考えていたんです。それをアトリエという形で提示しました。もちろん後から気づくことも多くて、バックヤード、パントリーがもっと必要だったとか、ゴミ箱を隠せるようなスペースを作ればよかったなどの反省点もたくさんあります」

設置されているランドリーの写真

暮らしを営む場を考え続けてきた黒田さんだからこそ、ここではその可能性を自ら実験的に実践します。たとえば浴室、洗面室もひとつの部屋として考えています。その空間を規定するのが、黒田さんがずっと使いたかったというMieleの洗濯乾燥機。「カウンター下に収めたかったので、洗濯機の高さに合わせて設計をしてもらいました。思った以上に来客が多くて、Mieleの食洗機も入れるべきだったと後悔しているくらい気に入っています」と、黒田さん。

洗濯をする黒田さんの写真

「なによりも気に入っていたのはデザインです。学生時代、ベビージッターのアルバイトで外国人用マンションに住んでいる方のお住まいにお邪魔することがありました。そこで海外製の洗濯機を目にして、憧れたのがきっかけでしょうか。一人暮らしを始めた時もアメリカ製の冷蔵庫を購入しました。いまのように日本の家電製品がしっかりとデザインされていなかった時代、海外の製品に強い憧れがあったんです。それがいまも続いているのでしょうね」

洗濯をする黒田さんの写真と牧の写真

「東京と違い、北軽井沢ではワークウェアをよく着ます。庭仕事もあるのでずいぶんと汚れます。軍手やTシャツなどとともにガンガン洗えることが頼もしくてうれしい。私は洗濯乾燥機を使っていますが、シーツやタオルなどの大判にもいい。東京に戻る当日、乾いたものを畳んで帰ります。夏は手洗い可能なシルクや薄いレーヨンのシャツを洗うこともあって、プログラムがそれに対応しているのもいいですね。冬はブランケットを洗いたい。シンプルなプロダクトが好みなうえに、シンプルな操作感もいいですね」

寝具の写真

そんな黒田さんにあらためて暮らしの豊かさを尋ねてみました。

「普段から理屈っぽく考えているわけじゃないけれど、一番大事なのは心なのかなと思っています。自分が好きなものに囲まれること、これが欲しいと思うこともとても幸せなこと。けれど、本質的には所有することで幸せを得るというよりも、所有することで生まれる時間、空間、環境、それは光や音のような五感に訴えかけるものも含めて、心に響くのだと思います。私の場合は、心の穏やかさ、自分らしくいられる時間が持てること、それが生活の豊かさにつながるのだろうと考えています」

デスクの写真

おそらくその黒田さんの感性を支えている一つが、好奇心なのでしょう。

「確かにそうかもしれません。少し話は逸れてしまいますが、ここを作る前に私は本当のところ何が好きなのだろうと悩んだ時期がありました。それを見つけたいという思いもあるなかで、アトリエのプロジェクトを進めたところもあります。結果、いまの自分はこんな世界観が好きだったんだと再発見することができたのです。時代が移ろうなかで好奇心を持ち続けられたのは、やはり編集者、ライターをやっていた経験が大きいのでしょうね。私が育った雑誌文化はとにかく誰よりも早くもっと先へということが、すべてにおいて最優先されていました。いまはそういう時代ではないけれど、どこかで私も誰より早く紹介したいという思いは消えていないのかもしれません。最前線を追いかけなくても、と思いつつ好奇心は失わずにいたい。いまも新しい情報はフォルダに保存をして、定期的に見直しています。若い時のように新製品の記事を書く機会は少ないけれど、新陳代謝をしていくことこそが生きているということなのかもしれません」

寝室の写真

黒田さんはアトリエを作る前に大病を患い、そこから驚異的な回復力で現場に復帰しました。

「昨年も整形外科の手術を受けたりと、あちこち手入れの必要な年代(笑)です。けれど術後は悪いところがなくなって、すっかり健康に。前よりずっと具合がいいですね。みながコロナ禍で働き方を考え直すなか、私はインテリアを考え直していたんです。不思議なもので、ずっとインテリアの仕事をやっているのに私自身の暮らしを考える時間がなかった。医者の不養生と言いますが、私はそれのインテリア版。病を得たときに、治ったら本当にやりたいことはなんだろうかと考えていたら家を作ることだったのです。アトリエを構えたことで、交友の幅も広がりました。周辺に暮らす人々、別荘を構える人々など、次々と紹介などで有機的なつながりが増えています。この年になってから新たに友人、親しい知人が増えるなんて思ってもみなかったし、とにかく楽しい。アトリエを構えてよかったと心から思えます」

アトリエに訪れれば、仕事のことを考えながらでも、窓の向こうに広がる季節折々の風景が黒田さんの心を豊かなものへと変えていきます。刻々と変わる自然の風景に心奪われながら、同時に安らぎを得ること。その時間の一端にMieleは寄り添い続けていきます。

GUEST PROFILE
黒田美津子 / Laboratoryy Inc.
インテリアスタイリスト、スタイルディレクター。
1990年代から多数の女性誌、デザイン誌でデザイン・インテリア関連記事の編集、執筆、スタイリングを担当。現在は雑誌、広告美術、住宅や展示会、商業施設、店舗、美術館の空間構成やスタイリング、VMDから個人邸まで、さまざまな空間のインテリアと空間演出を手掛けている。〈&Premium〉誌(マガジンハウス刊)にて「&Lifelong Items これから、20年使いたい日用品」連載中。

2026年8月28日(金)~30日(日)9月4日(金)~6日(日)の期間、北軽井沢のアトリエ Laboratoryy | Fern | Barnにて、軽井沢周辺の山々の木材を造形作家やデザイナーが用いた木製作品や自然素材を用いた布製品などを展示販売する企画展『unconstructed _ 木と布をそばに』を開催。

写真/竹之内祐幸
文/山田泰巨

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