アレルギー疾患の90%がハウスダストの影響
喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が多く来院する長田こどもクリニック。日差しがよく当たる院内は、かわいらしい壁紙やおもちゃに囲まれて、子供たちがリラックスしながら通院できそうな雰囲気。
長田厚先生は、同クリニックの院長をしながら、北里大学病院の小児科で呼吸器外来も担当。小児喘息・アレルギー疾患のスペシャリストです。
長田厚院長
明るい院内は、通院の緊張をほぐしてくれそう。壁紙もかわいらしいです
長田先生は診察の際、保護者との対話を特に大切にしており、専門的な知見に基づき丁寧に説明することを心がけているといいます。
「アレルギーの治療法などがまだまだ進んでいなかった時代は、家庭訪問をさせていただき、部屋の環境づくりの相談にのったり、こまめに掃除をするように指導することもありました。しかし、近年は治療研究が格段に進み、薬物治療によりしっかりとした予防手段が講じられるようになりました。ですから最近は、“必要以上に患者さん側がご自身の生活習慣に気を使わなくても、快適に過ごせるようにするのがお医者さんの義務です”と話すようにすることで、安心される保護者の方々は比較的多くなりましたね」(長田先生)
一方で、過度な掃除までは必要ないものの、日々過ごす環境ですから、部屋はもちろんこまめにキレイにした方がいい、とは伝えるようにしているそうです。
「アレルギー疾患の90%がハウスダストの影響を受けていると言われています。ハウスダストとは主にダニの死骸。昔のように無我夢中で掃除をする必要はありませんが、長時間過ごす空間ですから、ハウスダストがなるべく存在しないほうが当然アレルギーの予防には繋がりますよね。こういう話は、おおらかにかまえている保護者の方には、ちゃんとお伝えするようにしています。ただ、逆に掃除や環境づくりに、神経質になりすぎたり、追い詰められすぎるような保護者の方々には、普段の掃除で十分ですよ、そんなに頑張らなくて大丈夫ですよと、あえてお伝えするようにしていますね」と長田先生。
春先の花粉が飛散する季節は特に重要
昔は“ダニの三悪”として温床とされていたのが「ぬいぐるみ」「じゅうたん」「遮光カーテン」。それらを徹底的に掃除することをおすすめしていた時代もあったというが。
「掃除に関する実験データが存在するのですが、それらに基づいて、以前は畳の上は1平米あたり1分、じゅうたんは1平米2分かけて掃除機をかけましょうと話していたこともありました。ですが、最近は一生懸命掃除をしなくてもいいけれど、汚いよりはキレイなほうがいいですよと話すくらいにしています。ただ、春先の花粉が飛散する季節だけは別。窓などから花粉が入り込むことがありますから、洗濯物は部屋干しし、窓際や玄関付近をしっかり掃除するようお伝えしていますね」とのこと。
診察では、自身の子育ての経験を交えながら説明することも多いそうです
掃除機選びのポイントは吸い込む力と排気
SNSを中心にさまざまな健康情報・子育て情報があふれかえっている現代は、そういった情報に気負いがちな保護者の方々も数多くいらっしゃるのではないでしょうか。「普通の生活を続けていい」「普段の掃除を続ければいい」という長田先生の指導は、アレルギー症状に悩むお子さんを持つ多くの保護者にとって、緊張感をほぐしてくれる魔法の言葉なのかもしれません。
エビデンスドベースド(根拠に基づいた)情報の提供は、専門の医療のみならず、掃除機にまで及びます。「年に数件、保護者の方からどんな掃除機を使ったらいいですか? と聞かれることがあるんですよ。だから私はここ30年くらい、いろいろなメーカーの掃除機を購入しては、自分で試しているんです」と長田先生。
さまざまな掃除機を自分で使ってみた結果、長田先生が掃除機を選ぶ上で重視するようになったポイントは「吸い込む力と排気のきれいさ」とのこと。
「じゅうたんやマットを掃除するとよく分かりますが、吸い込む力が弱い掃除機は全然ゴミが取れません。私は自宅だけでなく、車のシートやトランクの中も掃除をするのですが、パワフルな掃除機は家庭内の塵やゴミだけでなく、車のトランクの中に落ちた砂や葉っぱなどもきれいに吸い込みます。しっかり吸い込む掃除機だと、動かす回数も少なくてすみます。それこそ、さっきお話しした“畳なら1平米あたり1分”という実験だって、吸い込む力が強い掃除機を使えば、もっと短時間でも十分ゴミを吸い込めますし」と長田先生は掃除機の吸い込むパワーの大切さを説明します。
さらに、排気のキレイさは、空気中のニオイが指標になるそうです。
「ニオイというのは粒で広がるんですよ。だから掃除機の排気が臭いということは、それだけ汚いものが宙を舞っているということを表します。ニオイは空気の汚れのひとつの指標です。長年使用している掃除機は蓋つきのダストバッグ式なので、ゴミ捨ての時にゴミが舞い上がらないところも気持ちがいいですよ。そういう気持ちよさを感じることが、掃除をこまめに続けるポイントではないでしょうか」と長田先生。ちなみに現在、診療室の掃除機は約10年以上ミーレを使っており、さらに24年前に購入したミーレの掃除機も現在現役として使用されているとのこと。
「人にとっていい掃除機の条件はほかにもあるかもしれませんが、私にとっては、吸い込む力と排気のきれいさ。さらに言えば頑丈で壊れにくく、メンテナンスサービスが良いのもいい掃除機の条件の1つ。長く大切に使い続けられるところも気に入っています」と長田先生は笑顔でした。
実に10年以上も使っているという診療室の掃除機を見せていただきました
アレルギーマーチをスタートさせない
「アレルギーマーチという言葉を聞いたことがありますか? 子供が成長するにつれていろいろなアレルギー疾患にかかることなんです。将来のアレルギーマーチをスタートさせないためには、小さいうちからハウスダストにさらされることを、なるべく防いだ方がいいですよ。そういう視点から、しっかりホコリをとることはアレルギー疾患予防の土台になるといってもいいかもしれませんね」と長田先生。
毎日の掃除は子供の将来の健康作りの大切な作業。気負わず、でも丁寧に続けることが重要なのかもしれません。毎日掃除をするなら、パワフルな掃除機の方が短時間で効果を発揮しそうです。ソファー用のツールや布団用のツールなどもあわせて使いこなせば、効率良く気になる箇所を掃除できるでしょう。
子供たちの未来のため、家族の健康のため、そんな視点で掃除機を選ぶことも大切かもしれませんね。
長田こどもクリニック長田厚院長
長田こどもクリニック長田厚院長
北里大学病院、国立小児病院、国立小児医療研究センター等での勤務を経て1995年から同職