今しか作れない、鮮やかなグリーン
料理研究家の寺本りえ子さんから教わる保存食の仕込み。発酵を愛する寺本さんから教わる発酵食も大人気ですが、今回は番外編で、つくったその日から楽しめる柚子胡椒がテーマ。しかも、柚子が熟して黄色く色づく前の青柚子を使った「青柚子胡椒」は、一年の中でも秋の入り口までのひと月ぐらいが仕込みの山。今しかつくれない、期間限定の楽しみです。
柚子胡椒は愛用する人なら万能であることはよく知られ、鍋料理はもとより肉に魚にと幅広く使われています。けれど寺本さんいわく、青柚子と青唐辛子の刻み粒がフレッシュに香るその味は、炊きたてぴかぴかの白ごはんに、お刺身に、フルーツやアイスに、必ずパーフェクトな相性を発揮してくれるほど、万能なのだそうです。皆で仕込んだあとの展開料理を楽しみに、皆の作業が始まりました。
青柚子胡椒のつくり方[材料](できあがり量200gぐらい)
- 青柚子皮:120g(1個80gぐらいの場合、8個くらい)
- 青唐辛子:種とへたを除いて40-60g(柚子皮の1/2~1/3)
- 塩:総重量の15%
[手順]
- 青柚子の皮をむき、細く刻み、塩と一緒にフードプロセッサーで細かくする。
- 唐辛子のへたと種を取り除いて刻み、塩と一緒にフードプロセッサーで細かくする。
- 両方を合わせてすり鉢で少ししっとりするまですり合わせる(辛めに仕上げる)。
青柚子胡椒の材料は、青柚子の皮と青唐辛子、そして塩だけとシンプル。青柚子と青唐辛子がフレッシュな状態で手に入ったら、すぐに作業します。
香りに包まれ、ひたすら刻む
まずは青柚子の皮むきから。皮下の白いわたをできるだけ拾わないように、薄く長く、包丁でむいていきます。くるくるとむいていくのも意外と難航。皮の裏に白いわたが残っていたら、苦みが出てしまうので、できるだけ削ぎ取ってから細かく刻みます。硬く茶色のイボのような部分は丁寧に取り除きながら。ひとり分120gの皮を用意するのに、ひたすらむいて刻んでもなかなか届きません。
それでもシトラスの香りに満ちてゆく部屋は、「瞑想のよう…」とうっとりしながら集中する参加者もいるほど、爽やかな気持ちよさ。おしゃべりしながら手を動かせば、あっという間に1時間、2時間と時間が経って……。
「皮を刻む作業が、慣れないと本当に時間がかかるので、気をつけて」と始まった作業ですが、「おしゃべりに夢中にならずに手をしっかり動かして」と先生からたびたび檄が飛びながら、少しずつ前進します。
皮を刻み終えたら、できるだけ早く塩と一緒にフードプロセッサーにかけます。ちょうどよい粒状になるまで、丁寧に様子を見ながら、時折、ヘラで混ぜながら。
青唐辛子は、数種類合わせるといい
青唐辛子は、素手で作業せず、ゴム手袋をつけて。
「個体差もあるし、辛みの特徴が違うから、数種類の青唐辛子を混ぜるのがオススメ」と寺本さんがコツを教えてくれました。
へたと種を取って小口切りにして、柚子皮の1/3から半量用意できたら、塩と合わせてフードプロセッサーへ。ゴリゴリとして水分の出ない柚子皮と違って、水分が多く、すぐペースト状になってしまう青唐辛子は、あっという間に粒状になるので、タイミングを逃してしまわないように注意します。青柚子の皮とは別でフードプロセッサーにかけるのも、そのためです。
それぞれ別々に粒状にした柚子皮と唐辛子を、最後にすり鉢に入れてすり合わせて仕上げます。ゴリっと手応えのある柚子皮をさらに潰して果汁を出し、さらに塩を入れていきます。
青唐辛子となじみ、少ししっとりしたらできあがり。この瞬間から、すぐに使える万能調味料の出来上がりです。
期間限定の味を、冷凍保存で長く楽しむ
今回は、皆で皮や唐辛子を刻み、最終的に二つの大きなすり鉢で仕上げました。それぞれに少し個性の違う辛み。それが手づくりの醍醐味です。その時々の実りの味を、楽しめます。
一度できた青柚子胡椒は、冷凍すれば半年から1年は色もきれいなまま味わえます。
柚子胡椒の概念が変わる味
今回は、できたての青柚子胡椒を、Mieleのオーブンを使って炊いた白ごはんと混ぜ合わせて食べました。青柚子胡椒プレートは、ほかにタコにオリーブオイルと柚子胡椒のカルパッチョ。シャインマスカットとブッラータチーズ、そこにチラリと柚子胡椒。
「柚子胡椒の塩分がしっかりついているから、チーズと合わせる場合は塩分の強すぎないリコッタやモッツァレラ、それにブッラータが合います」
鶏肉は、静岡から取り寄せた「天城軍鶏」を塩麹漬けにして、部位の違いを楽しみます。胸肉は、密閉袋に入れて熱湯に30分ほどでしっとり仕上げ、もも肉はアルミホイルで包んでMieleのオーブンで150度で30分以上かけて火を入れたあと、最後にフライパンで焼き目をつけて。部位による味わいの違いを、柚子胡椒をつけながら確かめます。
「すごく、おいしい」と皆が喜び、丁寧に箸を進めます。
「バニラアイスと柚子胡椒も、とても相性がいいんです。チョコとも合う。フルーツなら甘いもの。例えば桃やイチヂク、ラフランスや柿がいいですね」
「鍋には、つゆに溶き入れるとどうしても苦みが移るから、具にちょんと乗せて食べるほうがいいかもね」
などと、寺本さんのアイデアを聞いて、今日のひと瓶があっという間になくなりそうだと笑う人も。
「今までの柚子胡椒はなんだったんだろう」「これは今まで食べていた柚子胡椒とは全くの別物」という声も出るほど、皆、一様にフレッシュで香味爽やかな青柚子胡椒の虜になりました。これをちびちび舐めながらお酒を飲みたい、という声に、寺本さんは「ジンを飲むとき、ソルティドッグのようにグラスのふちに少し乗せるのもいいのよ」と。きっとあっという間に進んでしまい、冷凍庫に入れて保存する暇は、ないかもしれませんね。
FIRST PLACEのある「などや代々木上原」のほかに、建築家の岡村俊輔さんが主宰する「などや」は五反田に「などや島津山」もあって、今年は庭の柚子が豊作のよう。青柚子のうちに数十個、収穫できたので、岡村俊輔さんと仲間たちは、このワークショップに先立ち、寺本さんの手ほどきを受けながら、などや自家製の青柚子胡椒を仕上げました。
皮を剥き終えた柚子の実は、絞って醤油と合わせてポン酢にもでき、さらにその搾りかすは柚子湯にしてもいい。なかには、種からさらに化粧水をつくる方もいるということで、無農薬の天然柚子は、まさに余すところなく使い切ることができる、季節の実り、なのでした。
GUEST PROFILE
寺本りえ子(てらもと・りえこ)
料理研究家、フードディレクター。音楽活動を経て食の道へ。発酵食やスパイス料理のワークショップの開催、出張料理をはじめ、飲食店のアドバイザー、商品開発や食育にも精力的に取り組む。2021年4月より、フリースクールで食育を担当。発酵食スペシャリスト、食育インストラクター 、フレッシュスムージーアドバイザー、ホリスティックビューティアドバイザー、漢方養生指導士初級、薬膳・漢方検定取得、きのこマイスター他、食への多彩な興味を掘り下げている。
著書に『JOY of AGING』(宝島社、2015年発行)がある。最新刊は『からだの中からきれいになる ぬか漬けとアレンジ発酵料理』(KADOKAWA、2026年2月発行)。
@rieko_teramoto
協力/A RESTAURANT FOODS
プロの料理人に提供する食材を、一般家庭でも取り寄せ可能にするオンラインストア。今回は、伊豆で通常の3倍の時間をかけて育てた天城軍鶏より、モモ、ムネ、ササミを柚子胡椒をつけていただきました。
https://arestaurantfoods.com/
写真/太田太朗
構成・文/森 祐子
FIRST PLACE について
「Immer Besser」(常により良いものを)の理念のもと、125年にわたる歴史の中で暮らしを見つめてきたMieleと、場づくりを軸に人の営みを考察し、交流ハブとしての試みを重ねるnadoyaによるプロジェクト「FIRST PLACE」。キッチンを据えた場をつくり、集い、交わり、共に未来を考える。
FIRST PLACE 特別サイトへ

















