野菜をおいしく、腸を健康に
フードディレクターの寺本りえ子さんから教わる発酵食。第4弾は、発酵野菜です。仕込みから2日ほど待てば食べられて、仕込んだ野菜を2週間ほどはおいしくいただけるのが魅力。それが、発酵による微生物の働きで、腸もきれいにしてくれるというのですから、家事の合間に手をかけたいもの。
「発酵にかかわる微生物は、酵母、細菌、カビ菌と大きく分けて3つあります。今日は、野菜の乳酸発酵を促す細菌、乳酸菌の働きをつかった発酵です」(寺本さん)
乳酸菌は、食の糖分を分解して「乳酸」をつくり、食品の腐敗を引き起こす菌の繁殖を抑えたり、腸内でも、悪玉菌の増殖や定着を防ぎ、腸内環境を整える働きがあります。免疫力を高め、コレステロール値の低下、便秘の改善などの手助けに。
「腸内細菌は1.5~2kgあると言われていますが、善玉菌のバランスを増やし、悪玉菌を抑えるためには、乳酸菌をできるだけ腸に届けることが大事」(寺本さん)
今日は、野菜の塩もみや、塩と砂糖を混ぜた米の研ぎ汁に漬けた野菜で、野菜の表面に付着しているという乳酸菌が、塩の浸透圧で出てきた細胞液を分解する乳酸発酵の発酵保存食を学びます。
野菜の水分と「2%の塩分」で
旨みと酸味を引き出す
野菜を塩もみして、また、水キムチはお米の研ぎ汁を用いて仕込み、常温で保存すると、気温にもよりますがだいたい2日ほどで発泡し始めるのが、発酵の合図。そこからは冷蔵庫で保存します。
「塩と、水キムチはお米の研ぎ汁があればすぐ取り掛かれるので、あまり野菜が出た時など、思い立った時につくっておくのがいいですね。つくる習慣にしておく。実際、健康だけでなく、料理も楽になって、助けられることが多いと思います」
発酵が進むにつれ、旨みと酸味が出る発酵野菜。お酢やレモンでつける酸味とは違う味わいで、酸味のレパートリーが広がります。
今回もまずはほんのひと口の試食から。発酵の「正解」を知ることが、まずは大事だと言います。
「発酵食品は、正解を知っておくことが大事。目指す味や見た目がわからないと、味もぼんやりしがちですからね。腐敗かどうかは、匂いをかいで、あれ、おかしいと思ったら、食べるのは控えて」(寺本さん)
寺本さん自家製の水キムチと発酵トマトは、仕上がって数日がたち、色が少しくすんだ乳白色の汁に浸かった状態。
「わたしたちの体内は、塩分濃度が0.9%。だいたい1%の塩分濃度をおいしいと感じるようにできています。乳酸発酵は2%の塩分を基本につくります。それをそのままつまんだり、料理の隠し味に使ったりしながら、味と量のバランスを整えていきます。例えばザワークラウトは、餃子に混ぜ込れば味付けしなくてもおいしい。料理全体の分量とのバランスで、使えば大丈夫」(寺本さん)
サラダがわりにしたり、炒めものに加えたり。その塩分濃度がわかっていれば、混ぜる量も判断しやすいですね。キャベツや白菜なら、塩もみでずいぶんかさが減るので、たくさん食べられます。
「これからの季節、おすすめはスープなどの汁ものに入れること。旨みと酸味が、味わいを深めてくれます。冬になれば鍋も最高」
常温で濁り泡が出るのを待つ
では、実際にザワークラウトを仕込みます。今回は、紫キャベツとグリーンのキャベツ、2色使いました。
ザワークラウト<材料>
- キャベツ:500g
- 塩:10g(キャベツ重量の2%)
<つくり方>
- キャベツを千切りにして洗い、ざるで水切りしてボウルに入れる。
- 塩をしっかり揉み込み、水分を出す。
- 袋に入れて空気を抜き、キャベツが水分に浸かっている状態を保つ。
- 2日間ほど常温で発酵させる。
- 袋が膨らんだら小さく口をあけて空気を抜き、またとじて冷蔵庫へ。
キャベツの千切りは、できるだけ細かく。ざっと水洗いしたらザルにあげて水気を切り、2%の塩で強く揉み込みます。水切りは神経質にならず、キャベツについた水分はそのままでも大丈夫。
「優しく混ぜるのではなくて、ぎゅっぎゅっと水分が出るように」(寺本さん)
ボウルいっぱいだったキャベツも、あっという間にカサが減り、代わりに水分が底に溜まります。
「その水分に、キャベツが浸かるようにして保存するので、とっておいてくださいね。こんなにカサが減るから、一度にたくさん食べられます」
十分な水分が出たら、保存袋に入れて、空気が入らないようにしめます。1日半から2日ほどで、ガスが出て袋が少し膨らみ出すので、パンパンに膨らんだらまた空気を抜いて締め直し、バットに寝かせて冷蔵庫へ。他の発酵野菜も、基本のプロセスは全く同じです。
トマトも完熟を選び、粗みじん切りにして塩を混ぜ込んで。トマト自体の水分が多いので、揉み込まなくてOK。
「とにかく、水分の中に浸かっている状態を保って、空気にできるだけ触れさせない、というのがコツ。これはどんな発酵野菜も同じです。刻むと食べづらくて水分もない野菜は、水キムチにしましょう。オクラも水キムチが合いますね」
水キムチは、お米の研ぎ汁に2~4%の塩と1%程度の砂糖を入れて、一度沸かしてアクを取り、冷ましたものを漬け汁として使用します。研ぎ汁は、一度目はお米をさっと洗い水を捨て、二度目にしっかり研いだ濃厚な研ぎ汁を使います。
大根やにんじん、きゅうりなど、生食できる野菜のスライスを入れて。野菜そのものの水分が多くなくても、水キムチなら安心。清潔な瓶に入れて、2日ほど常温に置き、ぷくぷくと微かに濁り泡が出てきたら、発酵できている証拠。冷蔵庫に移します。
水キムチは、漬け汁に野菜から溶け出した植物性乳酸菌やミネラル、ビタミンが溶け込んでいるので、漬け汁ごと食べるのが効果的です。
発酵野菜からスピード調理
いつでも手に入るキャベツは、発酵野菜にピッタリ。ドイツの郷土料理であるザワークラウトですが、一度つくっておけば、針生姜も少し加えるだけで和風の味わいになるし、いろんな味わいのアレンジが効きます。
今日は、Mieleのオーブンを使って、オーブンベイク料理を。
豚ミンチとザワークラウトを炒めておき、茹でたじゃがいもを崩しながらさらに炒め合わせます。そこにマスタードを絡めて耐熱皿に入れ、チーズを乗せて焼くだけ!
味付けはなんと、ザワークラウトの塩分とマスタードだけ、というシンプルさです。しかも、全て火を通しているので、オーブンは5分ほど、おいしい焼き色がつく程度でOK。
そして、驚きは、水キムチと発酵トマトを使った和え麺です。
蒸し鶏やゆで卵など、好みの具を用意したら、茹でた麺に、水キムチの漬け汁と発酵トマトを乗せ、水キムチの野菜やパクチーをトッピング。
今回は、鶏むね肉を茹でてポン酢に潜らせておいた茹で鶏をのせました。
また、ゆで卵には、前回のワークショップに登場したお手製の醤油麹をちらり。
色々な味のレイヤーが、味わいを深めます。鶏やゆで卵は好みで。時間がなければ水キムチと発酵トマトだけで和えて、醤油麹やナンプラー麹で味を変えていくのも最高。
今回の麺は素麺でしたが、中華麺や米麺など、そのときに家にある麺で、ささっと手軽に。
みんなで食べるとそれはそれは楽しそう。なんといっても、本当に簡単に料理ができてしまうのですから。
発酵野菜をつくるプロセスもシンプル。塩味と旨み、爽やかな酸味がある発酵野菜を用いた展開料理は、味付けや煮込みに時間を割かなくても味に深みが出やすいので、時短でもあります。
体が少し重いな、と感じたら、ぜひ発酵野菜を準備して。たっぷりの野菜と乳酸菌で、腸を元気に整えましょう。
GUEST PROFILE
寺本りえ子(てらもと・りえこ)
フードディレクター、料理研究家。音楽活動を経て食の道へ。発酵食やスパイス料理のワークショップの開催、出張料理をはじめ、飲食店のアドバイザー、商品開発や食育にも精力的に取り組む。2021年4月より、フリースクールで食育を担当。発酵食スペシャリスト、食育インストラクター、フレッシュスムージーアドバイザー、ホリスティックビューティアドバイザー、漢方養生指導士初級、薬膳・漢方検定取得、きのこマイスター他、食への多彩な興味を掘り下げている。
著書に『JOY of AGING』(2015年、宝島社刊)、『からだの中からきれいになる ぬか漬けとアレンジ発酵料理』(2026年、KADOKAWA刊)がある。
@rieko_teramoto
写真/太田太朗
構成・文/森 祐子
FIRST PLACE について
「Immer Besser」(常により良いものを)の理念のもと、125年にわたる歴史の中で暮らしを見つめてきたMieleと、場づくりを軸に人の営みを考察し、交流ハブとしての試みを重ねるnadoyaによるプロジェクト「FIRST PLACE」。キッチンを据えた場をつくり、集い、交わり、共に未来を考える。
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