◆ 僕とコーヒー
神戸で生まれて育った僕にとって、コーヒーの存在はとても身近で大切な存在。
祖父に連れられていく、近所の喫茶店でサイフォン式コーヒーを淹れている風景から流れてくるなんとも言えない香りが、今の僕にとってのコーヒーの在り方を作ってくれたと思う。
コーヒーは美味しさも大事だけど、「いつ」「誰と」「どこで」が変わるだけで、とっても印象深い味わいとなるのが面白い。
僕は毎朝コーヒーを飲んでいるわけじゃないけど、不思議と気分のいい朝は必ずコーヒーが飲みたくなる。天気のいい日や、大好きな友人と約束があったり、楽しみな事がある日とか。
お気に入りのマグカップをさっとお湯で温めて、淹れたてのコーヒーをたっぷり注いで部屋をうろうろする。窓際でのんびりしている黒猫と銀猫 2 匹に話しかけたりする。
◆ “コーヒー + 音楽” でコーヒーの楽しみはもっとひろがる
一緒に音楽を聴く事もとっても大事で、「コーヒーと恋愛」ってよく聞くけど、僕は「コーヒーと音楽」が一番好き。
朝 のコーヒーを楽しむ為には和やかなブラジリアンミュージックがオススメ。
ジョアン・ジルベルトのアルバム『ジョアン 声とギター』は、イパネマの波打ち際の風景をゆったりと想像させてくれる。彼のナチュラルでささやく様な歌い方と、それに沿う様にリズムを刻むギターの音色と独特なボサノバのリズムが、今日1日をいい日にしてくれそうな予感にさせてくれる。
シンプルなエチオピアの浅煎りをたっぷりとマグカップで妻とシェアをする。そんな毎朝を迎えたい。
午後 のコーヒーは、ちょっとした仕事の合間に飲むミルクたっぷりのカプチーノに、少し濃い目のエスプレッソをタブルショットで仕事仲間と一息。
こんな時にスピーカーから流れて欲しいのは、ブルックリンに住んでいた頃に出会った SHE & HIM のアルバム『CLASSICS』。ズーイーの柔らかい歌声とM.ワードの渇いたギターの音色、ストリングスが午後の陽の光と重なって、とても穏やかな気持ちへ戻してくれる。
週末 、友人たちと楽しんだ夕食の後には、少しお酒の効いたコーヒーを楽しみたい。
オレンジピールを軽く剥いたら、エスプレッソカップの縁にさっと塗りつけ、グランマニエを少し多めに入れてエスプレッソを落とす。ふんわりと仕上げたフォームミルクと温かいミルクを 1:1で注いでシナモンパウダーをふりかけ、仕上げにオレンジピールをすっと香り付ける。
こんな時間はルー・リードの『WALK ON THE WILD SIDE』をアナログで聴きたい。真空管アンプと JBL のスピーカーから 60 年代のアンダーグラウンド的ニューヨークの雰囲気が溢れ出す。
いつだって格好いいことはコーヒーと音楽が作ってくれる。
◆ 高級な豆とか味だけじゃない、“コーヒーのある時間”を楽しむ
とにかく、コーヒーのある生活が好きでしょうがない。
味はどうだっていいなんて言えないけど、正直あまり気にしていない。コーヒーのある風景が好きなんだと思う。
もっと言えば、「誰かが淹れてくれたコーヒー」が一番好き。
どんな高い豆や、レアな豆が美味しくて素晴らしいって知っていても。僕のことを思って淹れてくれたコーヒーが一番好きな味。結局、美味しいコーヒーって、僕のために「誰かが淹れてくれたコーヒー」が一番美味しい。
いい豆じゃなくたって、完璧な淹れ方じゃなくたっていいって事。
気軽に会話や、雰囲気を楽しみながらコーヒーのある生活の中で過ごす時間が大切だと思う。
コーヒーをもっと楽しむためのレシピ
◆ 朝、自宅で大切なパートナーと
シンプルなエチオピアの浅煎りをたっぷりとマグカップで
ジョアン・ジルベルト 『ジョアン 声とギター』
2000年グラミー賞 ベスト・ワールドミュージック・アルバム受賞
ボサ・ノヴァの生みの親の一人と言われるジョアン・ジルベルト 晩年の名盤。ジョアンの声とギターのみの完全弾き語りアルバム
◆ 午後、職場で仕事仲間と
ミルクたっぷりのカプチーノに、少し濃い目のエスプレッソをタブルショットで
SHE & HIM 『CLASSICS』
ズーイーとM・ウォードによるインディロックデュオ SHE & HIM によるカバーアルバム。彼らが愛するAretha Franklinや、Ella Fitzgerald、Frank Sinatra 等の名曲、全13曲のカバーを収録。
◆ 週末、友人たちと楽しんだ夕食の後
オレンジリキュールとシナモンが香るカフェ・グランマニエを
ルー・リード 『WALK ON THE WILD SIDE』
ルー・リードの代名詞とも言える曲。デヴィッド・ボウイがプロデュースしたセカンド・ソロ・アルバム『トランスフォーマー』からのシングル。
Profile:
浅本 充 (あさもと まこと)
「ブラスリーベルナール」「adding:blue」「レスプリミタニ」でのサーヴィスとソムリエ、マネージャーを10年間経験後、BROOKLYNに渡米。2009年株式会社ユニテを設立。同年に人気のカフェ「自由が丘ベイクショップ*」をディレクション。コーヒーの造詣も深く、その楽しみ方のセンスには定評がある。コーヒーのみならずライフスタイルの提案と、新しいフードトレンドや、世界のオーガニック事情の知識も深い。現在は、様々な企業の飲食部門やライフスタイルのコンサルティングに参加。
* 現在は閉店