ミラノ・サローネ 2016の様子
2016.04.01

ミラノ・サローネ 2016 レポート Part 2 スペシャル インタビュー

Miele (ドイツ本社) は2016年4月、世界最大のデザイン見本市である「ミラノ・サローネ」に出展いたしました。
今回は、Fiera (見本市) 会場と、Zona Tortona (市内会場) の2か所でミーレの世界をご体感いただける展示およびイベントを実施。
ミラノ・サローネ会場にて、共同経営・代表取締役 Dr. ラインハルト・ツィンカン、および、ミーレ本社デザインチーム責任者 イエンツ・コイネケにインタビューいたしました。
文:浦江由美子/写真:松永学

SHARE THIS PAGE
  • Facebook
  • Twitter
  • Line

Interview 1. 共同経営・代表取締役 Dr.ラインハルト・ツィンカン

共同経営・代表取締役 Dr. ラインハルト・ツィンカン 創業2家のうちのツィンカン家の4代目。CEOは4ヶ国語を流暢に話す国際人。

ファミリー企業を続けることでの
揺るぎない経営理念
共同経営*・代表取締役 
Dr.ラインハルト・ツィンカンの言葉

*ミーレは、創業以来ミーレ家とツィンカン家の2家族の経営によるファミリーカンパニーです。

— ミーレが目指している世界観はどういったものでしょうか?

当社は創業以来、ミーレ家とツィンカン家の2家族の直系子孫が4世代に渡って、経営を続けてきた会社です。長い歴史の中で、守られてきたことが3点あります。1つは「Immer Besser-常により良いものを」という信念。これは私どもの核になる部分です。持続性、品質の向上に常に努めてきました。2点目が他者とは違う考え方をすること。3点目に自己資金力があることです。負債があったのは世界大恐慌の頃とドイツの東西統一後、東ドイツに新しい紙幣が配布された後の2年だけです。会社は成長していますが、無駄な投資や借金はしていません。いつの世代もこのルールに則ってきました。

— 日本人にミーレが支持されるには、何が必要と感じますか?

たくさんの競争相手がいる世界で人々の意識を変えるのはとても困難なことです。私たちがいくらロングライフの良いプロダクトを作っても、お客様に理解してもらうには時間がかかります。しかし、今後、マーケットがどのようになるかがわからなくても、良質の製品の価値を理解してもらい、難しいことは忘れてお客様がハッピーになってもらうための準備は出来ています。

当社は歴史を振り返っても時代の先を見越した企業です。1929年、みんながお金のない大不況の頃に食洗機を発表しています。私の父は1958〜60年、当時のフォルクスワーゲン・ビートルを買う半分の金額の家族向け初の乾燥機を販売しました。時代のニーズを見事に反映しました。90年代には同僚の中にも首をかしげる人がいる位、必要だろうかと思われたスチーマーを販売し始めました。今では8世代目にまで進化しています。生産してから、お客様に知っていただく、便利さをお伝えするということを準備と共に行ってきています。

— ビルトイン・キッチンの文化がなく、居住空間が狭い日本でミーレはどのように受け入れらるでしょうか?

私は祖父の兄弟が日本と1920年代から商売をしていたこと、彼が日本のアートコレクターであったことから、若い頃から日本の文化を理解してきたと思います。日本人が小さな家に住んでいることも知っています。しかし、近年、日本人は外国に出てたくさんの文化に触れている。現代人の仕事への価値観やファミリーライフは随分と変わってきたはずです。そして、キッチン自体も違った役割を持つようになってきています。スペースを合理的に使うということ。オーブンとスチーマー、スチーマーと電子レンジ、食洗機。こうした便利な機能を取り入れることで、小さいスペースにも便利さが生まれると思うのです。

— ミーレは技術面でもデザイン面でも革新的な製品を開発してきました。どんな努力をされているのでしょうか。今後、どのような未来像をお持ちですか?

ミーレの商品は、どんな環境にも合うように何度もテストを行います。パートナーやデザイナーと、細かいディテールについても深く話し合います。実際に自宅でも新製品は使ってみます。デザインはデザイナーと世界中の見本市やインテリア・デコレーションのトレンドを見てまわります。スタイリッシュよりも飽きのこない技術を踏まえたデザインを心がけています。デジタル化がすすみ、スマートフォンの時代になり、スクロールしてタッチという行為が一般になってきた今は変化の時代です。次世代が求めるインターフェイスへの取り組みが必要です。そして、私たちの築いてきた歴史と文化遺産を息子たちが楽しく引き継いでくれることを望んでいます。

Interview 2. ミーレ本社デザインチーム責任者 イエンツ・コイネケ

ミーレ本社デザインチーム責任者 イエンツ・コイネケ 広島に留学していたこともあり、日本語もお話しになるコイネケさん。

ミーレ・デザインチームのヘッド
イェンツ・コイネケさんが語る
ArtLine とミーレ・デザイン

ミーレの15人のデザインチームのヘッドを務めるイエンツ・コイネケさん。Fiera会場のミーレ・ブースでジャーナリストのインタビューに答えました。

— 新製品の機能で他社と比べて優れているのはどんな点でしょうか?

今回のミラノ・サローネで発表したArtLineはミニマルなデザインで、ハンドルがありません。ボタンを押すだけでオーブンが開くようになっていて、すっきりしています。そして、メタリックなグレーが加わりましたね。
ミーレはデザインだけでなく、特に安全性を非常に重視しています。オープンメカニズムには十分な配慮を施しました。安全性を考えた結果、閉めるのは自動ではなく、マニュアル、手を使っていただくかたちになりました。

— 開発で大変だったことは?

新しい色を考えるのにずいぶん、2年くらい時間がかかりました。今回はどちらかというと冷たい感じのグレーに決まりましたが、候補としてはブラウンや温かみのあるグレーという選択肢もありました。グラスパネルに何度も微妙に異なる色を吹きかけて、細かい調整を行いました。

— ミーレの製品はシンブルなデザインで定評があります。家電をデザインされるのにどんな配慮をされていますか?

ヨーロッパでは、リビングルームとキッチンを1つの空間とすることが増えてきています。ですので、ビルトインのキッチン、インテリアデザインに興味のある人たちのニーズに答える必要性があります。時代にとらわれず、品質と革新性を考えます。ArtLineのワンタッチ操作のようには時にはサプライズもあります。強調しすぎない控えめさ、優しい色を選んでいますね。

— 今年のトレンドはどう思われますか?

早いスピードで変化していますね。ナチュラルな暖かい色が多かったです。それに石、ガラス、メタル、ウッドなど自然素材が使われている気がしました。前回に比べて、白いトーンが少なくなったと思います。

— ミーレの20年という製品寿命はとても長いスパンかと思いますが、これからミーレの製品はどのように変わっていくとお考えですか?

インターフェイスのアップデートが将来は可能になってくるでしょう。ユーザーの要望による対応が予想されます。好きなレシピをカスタマイズしたり、サービスやシステム・デザイン面の向上も大きなテーマとなってくるでしょう。


<< 現地レポート Part 1へ

現地レポート Part 3へ >>

SHARE THIS PAGE

  • LINE