ミラノ・サローネ2016について
記録的な総動員数だった家具の見本市、Salone del Mobile.Milano
ミラノ・サローネは毎年、イタリアの首都で行われる世界で一番大きな家具の見本市です。有名デザイナーがメーカーと協力して新しい椅子やソファー、家具を発表する華やかな舞台。今回で55回目を迎え、2016年は37万人を超える来場者を記録したそうです。「数年前までは10万人くらいの参加でしたけれど、みるみるうちに30万人を超えしましたね。」と毎年、ミラノを訪れる家具メーカーの関係者の方のお言葉通り、年々、世界中から訪れる人の数は増え続けています。今年はミーレも参加した2年に一度、行われるキッチン家具〈Euro Cucina〉とバスルームの展示〈International Bathroom Exhibition〉が開催された年でもあります。
ミラノ・サローネは単なる家具の見本市から、ミラノ市のいたるところでサテライト・イベントや展示に派生するきっかけを作りました。この期間はミラノ・デザイン・ウィークと称され、インテリア関係のショップの多いブレラ地区ではBoffiやBulthaupなどの多くのキッチン家具メーカーのショールームやインテリア家具の展示が集中しています。また、ミーレが〈Invisible Kitchen〉という未来のキッチンの構想イベントを行ったトルトーナ地区ではトヨタやLexus、シチズン、アサヒガラス、アイシンなど日本のメーカーもクリエイティブなプレゼンテーションで訪れる人を驚かせていました。
今年は日本とイタリア国交150周年の記念するべき年。日本からのデザイナーや工芸家、クリエーターの方々が招待され、道行く雑踏で偶然に知り合いにばったり出会うことまでありました。イタリア版エルデコのパーティーで久しぶりにイタリア人編集者の友人に会いました。昨年のミラノ万博で日本館がとても好評で、パビリオンに入るのに10時間待ちだったそうです。彼女の話では日本はイタリアで大ブレイク中のようです。とにかく、ミラノ・サローネ、デザイン・ウィークは世界中の関係者が集まり、パーティも多い、お祭りです。
今年は約20年ぶりに21世紀のデザインを考える〈Triennale International Exhibition〉という展覧会が再スタートしました。商業ベースだけではなく、市内の様々な美術館の展示に子供からお年寄りまでミラノ市民が誇らしげに足を運ぶ姿は微笑ましい光景です。
ミーレのFieraでの展示について
〈Euro Cucina〉でのお披露目となったニュー・デザインArtLine
ミラノ・サローネの見本市会場、通称Fieraフィエラ。ミーレは〈Euro Cucina〉キッチンメーカーのセクションの中心に大きなブースを確保していました。ビルトインのオーブンやスチームオーブン、スチーマー Generation 6000の ArtLine には驚きました。というのも、オーブンにハンドルがありません。右上のオープン・ボタンを押すだけで、自動にそれもエレガントにゆっくりと開くのです。キッチンはどんどんとインテリアの一部となっている究極のすっきり感。従来の白と黒に加えて、どんな色にも調和しやすいメタリックなグレーの配色を加えたのは、キッチン家具とのコンビネーションを考えた画期的な判断だと思いました。
ドイツらしいなあと思ったのがEcoflexという食洗機です。こちらもハンドルの無いモデルがありました。トントンと2回ノックすると開く、魔法のようなしくみ。58分という従来の半分にスピードアップした洗浄時間。新たに小さくなった2、3分で水に溶ける洗浄用タブレットも開発。はじめの洗浄用に使ったお湯を専用のチューブを通して再利用することでエネルギーを節約します。ヨーロッパ基準のA+++という最高値を超えた究極のエコ食洗機。時間の節約にもなるなー、欲しいなーと思いました。中の配列のファンクションも進化していて、黄色い部分は動かせるようになっています。ワインやシャンパングラスがグラグラしないように新しいラバークリップでしっかりホールドし、綺麗に洗浄。どこまでも機能が追求されていますね。
昨年の秋、ベルリンの見本市IFAで見かけた表面が黒板の冷蔵庫がミラノでも出展されていました。家族の連絡事項の伝言板に使ったり、足りない食材とか、レシピなんかもチョークで、アナログで、ささっと書けるので便利です。
ミーレ・ブースのまわりにはイタリアのDadaやFendi、ドイツのLeichtなど多くのキッチンメーカーの出展がありました。今年、初出展という大阪が本社のsanwa company もミーレのIHを展示に取り入れていて、信頼されているメーカーなんだと改めて感じました。
ミーレのZona Tortonaのイベントについて
未来のキッチンへのインスピレーション
The Invisibile Kitchen 目に見えないキッチン
トルトーナ地区では多くの企業が自社のプレゼンテーションのため、展示を行っていました。家具に限りません。デザインがテーマです。日本メーカーに加え、Jaguarや3M、ゴアテックスなどがアーティストやデザイナーと組んで、自分たちのクリエイティブな世界を見せていました。見本市とはまた違うブランド・イメージ構築の場です。
ミーレは2家族が過去4世代続いてきた歴史あるファミリー企業です。Immer besser「常によりよいものを」という信念で、常に業界のトップランナーとして走り続けています。先見の明で知られるミーレは、会場をおさえるのが至難の業といわれるトルトーナ地区で、今年のミラノ・デザイン・ウィークで初めて、未来のキッチンのすがたを想像させるプレゼンテーションを試みました。
会場では未来のキッチンでシェフと料理の知識があまりない若い男の子が3コースメニューを映像と共に作っていくライブ・パフォーマンスが行われました。インスタレーションは昨年のベルリンの壁崩壊25周年記念で壁沿いに光のインスタレーションを行ったAgentur Wihtevoidが手がけています。
3コースのメニューは野菜スープ、ミラノ風カツレツ、サツマイモのアイスクリームとドイツとイタリアをミックスしたもの。3つレシピを未来のキッチンで料理したものは実際にライブ・パフォーマンスで1つのレシピができる上がるとゲストに試食していただきます。
未来のキッチンがどんなに便利になっているかと言えば、、、。人の調理を音声や映像で自動的にガイドし、導いていくようなキッチン。例えば、何かわからない野菜をテーブルに置くだけで、その名前が表示されます。野菜にナイフを入れただけでカットした分のグラム数が表記されます。IHクッカーの進化したものも登場しました。料理をしている鍋を動かすと、その鍋があった部分はすぐに常温になり、熱くありません。オーブンの前に立つと自動的にドアが開きます。冷蔵庫の中に入っている食品の購入時期など情報が管理され、無駄がありません。
会場では時には「本当?」という意味でしょうか、ドッと笑いの出る瞬間もしばし、ありました。でも、もしかしたら、このライブ・パフォーマンスで体験しているミーレが考えるキッチンはもうそう遠くない将来に実現するのかもしれませんね。
このトルトーナ地区での初イベントも大好評で連日あわせると23,000人の参加がありました。12,000の市内で行われるイベントの中から選ばれる〈ミラノ・デザイン・アワード〉の16社のファイナリストにも選ばれました (日本のミシン・メーカー、AISINのDesign New Daysが最終的に受賞) 。ミーレは品質と共に、デザインと遊びの面でもミラノで確実な感触があったようです。