The Future house Predicted by Miele「ミーレのある家」という未来
2024.11.21

The Future house Predicted by Miele
「ミーレのある家」という未来

日本のみならず世界中のキッチンやビルトイン機器の取材を重ねているキッチン・ジャーナリスト本間美紀さんが、6年ぶりの出展となった2024年のミラノサローネ・ミーレブースを訪れて感じた「ビルトイン家電の未来」。新しいカラーリングからさまざまな機器とのネットワーク化、食の未来まで、ミーレの最前線をレポートします。

※本コンテンツは「REAL KITCHEN&INTERIOR(リアルキッチン&インテリア)– キッチンをインテリアから考える」の転載記事となります。

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世界のビルトイン家電の最新事情レポート。今回は日本でも最も人気があり、知られているドイツのミーレ。けれどもミーレといえば食器洗い機?と思っていませんか。

ミーレは1899年創業。バターメーカーや洗濯機など攪拌技術を使った「暮らしを便利にするものづくり」から始まったブランドで、設立125年を迎えます。けれども現在は最新のテクノロジーを暮らしに溶け込ませて、「人生にゆとりの時間と価値ある時間」を生み出したいと考えています。6年ぶりに出展したミラノサローネ国際家具見本市「FTKテクノロジー・フォー・ザ・キッチン」でも、ミーレはメインブースとして多くの来場者を集めていました。約1,000平方メートルの展示スペースで、テーマは「すべてのキッチンの鼓動(The Pulse of Every Kitchen)」という生命力を感じるものでした。

FTKテクノロジー・フォー・ザ・キッチン イメージ

展示の主な内容は、2つの新しいカラーと、快適で持続可能な生活を実現するデジタル機能です。

今回ミーレは、新色「パールベージュ」と「オブシディアンブラック マット」のビルトイン家電を発表しました。ただそれは単に新色を出しただけに終わらない話なのです。ビルトイン家電ブランドはこういった色や素材の提案で、家具やインテリアの街ミラノで、世界のキッチンブランドとの関係を構築することも大切に考えています。

パールベージュカラーの調理機器の写真

インテリアとビルトイン家電のデザイン的な調和は、もはや当たり前の時代になっています。家具の世界に目を向けても、キッチンとダイニング、バスルームと寝室、クローゼット、アウトドアテラスとリビングなど居室の境目はボーダーレスになっています。キッチンはこれまで以上にインテリアに溶け込むことを求められ、家電も同じ使命を担っています。ミーレもここ数年、ヨーロッパのキッチン、インテリア周りで起きていることを察知しています。

パールベージュカラーの調理機器の写真

ミーレはドイツでもキッチンメーカーの集まるエリアにあるため、キッチンデザインの情報が集まりやすく、インテリアのトレンドよりも長寿命になる家電のフェイスの色を時間をかけて検証します。その結果がグレージュやライトオークと相性のいい「パールベージュ」。そしてよりシックな質感に寄り添う「オブシディアンブラック マット」の2色を生み出したのです。

オブシディアンブラックマットカラーの調理機器の写真

マットブラックはよりノーブル。ブラックキッチンは日本でも主流になっていますから、期待できそうです。「オブシディアンブラックマット」は、マットな表面の質感を採用し、時代のトレンドに応じた高級感を演出します。

そして「パールベージュ」はグレーとベージュを温かく融合させた色調で、これらの色は、暗めのインテリアにも、明るい空間のエレガントなアクセントとしても、個別に美しく調和します。

パールベージュカラーの調理機器の写真

残念ながら日本への導入は、現段階では技術的な理由で難しいということですが、ミーレの開発力の成果として知ってほしいと思います。

ミーレは早くからIoT、家電のネットワーク化に力を入れてきました。

展示のイメージの写真

ミーレのアプリでは、例えば、スマートフォンからオーブンの状態を確認したり、カメラ搭載のオーブンであれば、調理過程の庫内画像をモニターすることもできます。さらに、洗濯や食器洗いが完了した際に通知を受け取ることで、無駄な確認作業を省くことができます。

アプリで操作しているイメージの写真

また、アプリは食器洗いや洗濯プログラムのエネルギー消費や水使用量などに関する情報も提供し、エネルギーの節約を可視化してくれます(日本での導入時期は未定)。

アプリで操作しているイメージの写真

1階と2階で離れていても、外出中でも、家庭内にオフィスがありリモートワークをしていても、最も効率的な家事を忠実に代行してくれる。それがミーレの未来の家電であり、その範疇は「キッチン」を超えています。

これからは「ミーレのある家」が暮らしのきめ細かなサポートをしてくれる住まいとして価値を持ちはじめるのだと見せてくれました。

オーブンのAIがレシピを認識して自動で準備したり、ビルトイン家電がそれぞれネットワークでつながりタイムマネジメントを行う。そんな夢のような機能も会場では披露されました。

イベント中のイメージの写真

こうした調理中の画像の共有や画像分析による自動調理がどこまで楽しくて、どこまで便利なのかは実際に使ってみないとわからない部分もありますが、使う前から「これは!」と思ったのが、ミーレの「MealSync」です。

オーブンで調理をしているイメージの写真

これは2台のオーブンをネットワークでつないで、調理の出来上がり時間を自動であわせるというもの。例えば、メインディッシュはオーブンで調理し、それに合うサイドディッシュをコンビスチームオーブンで調理する場合、「MealSync」を使えば、1台の調理をスタートした後、適切な時間にもう1台も自動で調理がスタートし、最終的にメインディッシュとサイドディッシュが設定された同じ時間に完成します。

オーブンで調理をしているイメージの写真

ミーレは、最新のネットワーク化された家電製品を、大型のアニメーションLEDスクリーンで紹介します。例えば、便利で確実な調理、食品ロスの防止、エネルギーを節約するユーザー行動などに対応する、独自のソリューションを提供します。「MealSync」や「Smart Food ID」を活用することで、最適な調理結果を得られ、「消費量ダッシュボード(Consumption Dashboard)」では、電力や水の使用量を含む消費行動の透明性を最大限に高めることができます。

アプリからはオーブン内の料理中の動画をリアルタイムで見られたり、他人と料理の画像を共有できたり、ソーシャルネットワーキングの楽しみも生まれます。

アプリで操作しているイメージの写真

もちろんアイコニックアイテムの食器洗い機も進化しています。まったく新しい食器洗い機のバスケットデザインを提案し、再利用可能なストローやリターナブルボトルを安全に収納できます。また「FrontFit」機能により、扉のメカニズムを工夫して小さな隙間を埋め、食器洗い機がどのようなキッチンデザインにも美しく調和するようにしました。

食洗器の写真

一方、ヘッドルームフードは、特に背の高い方の調理時の自由な動きを提供し、よりコンパクトなデザインに加えて、コンクリートやパティナ(緑青)ブロンズの外観の新しいカラーバリエーションを選べます。

キッチンのイメージ写真

さてユーロクチーナの会場でおなじみの光景なのが、各社が美味しそうな匂いをさせる調理デモンストレーション。今年のミーレは南チロル出身のノルベルト・ニーダーコフラー(Norbert Niederkofler)氏の特別調理デモンストレーションを行いました。ニーダーコフラー氏は新アルプス料理を考案し、料理を通して感情教育をする3つ星シェフです。

調理デモンストレーションのイメージ写真

新アルプス料理「Cook the Mountain」とは、地産地消をベースにフードマイルを抑え、旬のものを使い、通常ならゴミとなってしまうような野菜クズにまで目を向け、活用し、新しい味覚と体験、そして食の未来を考える料理です。

野菜の皮を使ったパウダーを振りかけた料理は何味とも言えず、最初は戸惑いましたが、「ゼロウェイスト料理」というこれまでにない「味」に慣れる時代が来る、と予感させました。

調理デモンストレーションのイメージ写真

ミーレもサスティナビリティの観点で、レシピや食品の調理に関するヒントをアプリが提案していくそうです。

ミーレブースのイメージ写真

過去、ミラノでミーレはさまざまな驚きを人々に与えてきました。2016年は冷蔵庫の扉やIH、オーブンのインターフェイスがIoT化し、デバイスと人間がコミュニケーションを取れるようになるという大変、斬新で象徴的な展示。理解できる人がほとんどいなかったくらいです。

これは2018年、6年前の展示ですが、発表している技術はいまだに驚くべきものです。

2018年は衝撃的なダイアローグオーブンの登場!氷の中に埋め込んだ魚をオーブンに入れて、その中の魚にだけ加熱ができるなど(特殊な電波の技術の成果で日本では発売されていません)。低温調理もぶっ飛ぶ、いまだに最先端すぎる技術でした。

2018年の展示から。オーブンに入れた氷の塊の中からは、調理された魚が出てきました。本当にこれには驚きました

振り返って2024年、そしてこの先は、「家にミーレというOS(オペレーションシステム)を組み込む、オールミーレ」という考え方を提唱してたように思います。


キッチン、ランドリー、ホームクリーニングまでミーレという一つの考え方を住まいに組み込むことで、誰もが使いやすく、快適な家庭生活を送れる。ミーレそれぞれの製品はそんな大きなビジョンに繋がれています。

日本ではまだキッチンにミーレ、というイメージが強いですが、5年後にはどうなっているでしょうか?ミーレが見せてくれるのはいつも、最初は驚くけれど、確実に手の届く5年先の未来なのです。

※ここで紹介した製品はミーレ本社の取材に基づいたもので、日本では販売されない製品もありますのでご注意ください。

企画制作=「REAL KITCHEN&INTERIOR」
編集・執筆=本間美紀+宮澤明洋

※本コンテンツは「REAL KITCHEN&INTERIOR(リアルキッチン&インテリア)– キッチンをインテリアから考える」転載記事となります。

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